切る場所が残っているうちは、どんどん切った。傷が治ったらその上を切った。
外に出るときは、大音量で音楽を聞いた。何を聞いてるのかはどうでもよかった。孤立を求めた。
僕は感情を殺した。
他人には見えないものが見えるようになった。机の上に黒い鞄が見えた。誰かの忘れ物なのだと思って近づくと、本当は何もなかった。ソファーには人が座っていた。景色が揺れていた。暑くもなく寒くもなかった。
僕は僕の中に住んでいた。
そして、今も僕は僕の中に住む。決して居心地はよくないけれど、ここにしか僕の存在を許してくれる場所は無い。
生きる意欲も無いままだ。
時々、カミソリを腕に当てて考える。君は生きてるかい。
終わりです。
2009/04/30
2009/04/29
「生物としては同じ存在であるという確証もなく」Vol.3
僕は進学をきっかけに一人暮らしを始めた。
生活費や学費は親に工面してもらっていた。
一人暮らしをしたかったのは、自分のことを知っている人のいないところに行きたかったからだ。その場所では僕に何かを期待する人はいなかった。
僕は誰かが僕に何かを期待している状態から、僕自身が僕に何かを期待する状況になった。そして気付いた。
僕は僕自身に、僕が誰かの期待に応えるということを期待していたのだ。
僕は絶望した。絶望と同時に、何か大きなものに包まれるような、安心と不安が入り交じった感覚に陥った。僕は特別な生物ではなく、街を歩けば何処にでもいる人間になった。それ以来、蟻の音を聴くことはしなくなった。
僕は蟻になったのだ。
僕に生きていく理由はなくなった。それまでは、いつかこの世界のたねあかしがあると思って生きてきた。僕が物語の主人公だったのだ。それが生きる原動力だった。しかし、僕は世界の一部となってしまった。
蟻の群れの一匹となってしまったのだ。
生きていく理由はなくなったが、他人に僕が生きていくことを期待されている状態は続いていた。
僕にはもう、生きていく理由もなかったし、生きているという実感も持てなかった。
だから腕を切った。引きはがされた細胞が元通りになるのを間近で感じて、生きていることを認知するようになった。
続きます。
生活費や学費は親に工面してもらっていた。
一人暮らしをしたかったのは、自分のことを知っている人のいないところに行きたかったからだ。その場所では僕に何かを期待する人はいなかった。
僕は誰かが僕に何かを期待している状態から、僕自身が僕に何かを期待する状況になった。そして気付いた。
僕は僕自身に、僕が誰かの期待に応えるということを期待していたのだ。
僕は絶望した。絶望と同時に、何か大きなものに包まれるような、安心と不安が入り交じった感覚に陥った。僕は特別な生物ではなく、街を歩けば何処にでもいる人間になった。それ以来、蟻の音を聴くことはしなくなった。
僕は蟻になったのだ。
僕に生きていく理由はなくなった。それまでは、いつかこの世界のたねあかしがあると思って生きてきた。僕が物語の主人公だったのだ。それが生きる原動力だった。しかし、僕は世界の一部となってしまった。
蟻の群れの一匹となってしまったのだ。
生きていく理由はなくなったが、他人に僕が生きていくことを期待されている状態は続いていた。
僕にはもう、生きていく理由もなかったし、生きているという実感も持てなかった。
だから腕を切った。引きはがされた細胞が元通りになるのを間近で感じて、生きていることを認知するようになった。
続きます。
2009/04/27
「生物としては同じ存在であるという確証もなく」Vol.2
生活には困らなかった。僕は誠実で快活な少年として存在していればそれでよかった。
僕は一人きりになると、蟻を探すようになった。
道を歩くと、自分の知らない間に何匹も踏みつぶしているであろう蟻にも色んな種類があることがわかった。正直、蟻が羨ましかった。誰に何を期待されるわけでもなく、その命も特に重要視されることもない。その中の一匹がいなくなっても、他の蟻に迷惑がかかるわけでもない。
しかし、僕は蟻の営む生活に興味があったわけではなかった。蟻は小さい。人間の指先に噛み付くこともできない。
そんな蟻の中から特に大きいものを選んだ。
よく見ると顎がしっかりとしていて髪の毛くらいなら切ることができそうに見えた。
僕はその蟻の触覚を二本とも引きちぎった。
触覚が蟻の身体から離れまいとする力を僕の指先のわずかな力が上回った。何かがちぎれるような音がしたような気がした。実際には音が聞こえたわけではない。指先に残った蟻の最後の抵抗が音となって脳に伝わってきた。
僕は、その音を何度も頭の中で再生しながら、その蟻を地面に置いた。
それまで、蟻の動きは何かの意志を持っているように見えた。しかし、触角をもぎ取られたそれの動きは完全にランダムなものとなった。
僕は指先から脳に伝達される音の虜になった。
なるべく大きい蟻を選んだ。その方が指先に残る感覚が強いからだ。蟻を採取するお気に入りの場所ができた。
僕が蟻に期待していたのは、音とその後のランダムな動きだった。
続きます。
僕は一人きりになると、蟻を探すようになった。
道を歩くと、自分の知らない間に何匹も踏みつぶしているであろう蟻にも色んな種類があることがわかった。正直、蟻が羨ましかった。誰に何を期待されるわけでもなく、その命も特に重要視されることもない。その中の一匹がいなくなっても、他の蟻に迷惑がかかるわけでもない。
しかし、僕は蟻の営む生活に興味があったわけではなかった。蟻は小さい。人間の指先に噛み付くこともできない。
そんな蟻の中から特に大きいものを選んだ。
よく見ると顎がしっかりとしていて髪の毛くらいなら切ることができそうに見えた。
僕はその蟻の触覚を二本とも引きちぎった。
触覚が蟻の身体から離れまいとする力を僕の指先のわずかな力が上回った。何かがちぎれるような音がしたような気がした。実際には音が聞こえたわけではない。指先に残った蟻の最後の抵抗が音となって脳に伝わってきた。
僕は、その音を何度も頭の中で再生しながら、その蟻を地面に置いた。
それまで、蟻の動きは何かの意志を持っているように見えた。しかし、触角をもぎ取られたそれの動きは完全にランダムなものとなった。
僕は指先から脳に伝達される音の虜になった。
なるべく大きい蟻を選んだ。その方が指先に残る感覚が強いからだ。蟻を採取するお気に入りの場所ができた。
僕が蟻に期待していたのは、音とその後のランダムな動きだった。
続きます。
2009/04/26
「生物としては同じ存在であるという確証もなく」Vol.1
一杯目はビール。
誰が決めたのかはわからないが、気がつくと、さっきまで空だったグラスにビールがなみなみと注がれている。合図がされると全員一斉にグラスを口に運ぶ。
僕は喉を刺激する炭酸とアルコール独特のやくような味に顔をしかめる。向かい側に座っていた女の子が心配そうに声をかけてくる。
大丈夫、やっぱりビールは美味しいよね。
返事をする。嘘でもないし真実でもない。
**君って誰にも話しかけられたくなさそうな雰囲気だから。
僕がそんなことを言われるようになったのは数年前からだ。
自分が特別な存在だと思ったことは何度もある。その度に頭を振り、その考えを掻き消してきた。
周りの人間に監視されている。
小学生になった頃から、親からも兄弟からも、全ての人間が僕という生物の生き方を監視しているように思うようになった。僕の知らないところで、僕の知らない言葉を使って、或いは暗号のようなものを用いて僕のことについて話している気がしてならなかった。僕が何か重大な失敗を犯したり、周りの人間を超越する生物に変わったとしたら、殺されるような気さえした。
だから、僕には周りの人間が僕に何を望んでいるのかを敏感に感じ取る必要があった。そして、僕にはそれが出来た。
そうやって周りの人間の期待に応えて生きるのは簡単だった。幸い、それらの期待は僕の能力の範囲内で達成できるものばかりだったのだ。
続きます。
誰が決めたのかはわからないが、気がつくと、さっきまで空だったグラスにビールがなみなみと注がれている。合図がされると全員一斉にグラスを口に運ぶ。
僕は喉を刺激する炭酸とアルコール独特のやくような味に顔をしかめる。向かい側に座っていた女の子が心配そうに声をかけてくる。
大丈夫、やっぱりビールは美味しいよね。
返事をする。嘘でもないし真実でもない。
**君って誰にも話しかけられたくなさそうな雰囲気だから。
僕がそんなことを言われるようになったのは数年前からだ。
自分が特別な存在だと思ったことは何度もある。その度に頭を振り、その考えを掻き消してきた。
周りの人間に監視されている。
小学生になった頃から、親からも兄弟からも、全ての人間が僕という生物の生き方を監視しているように思うようになった。僕の知らないところで、僕の知らない言葉を使って、或いは暗号のようなものを用いて僕のことについて話している気がしてならなかった。僕が何か重大な失敗を犯したり、周りの人間を超越する生物に変わったとしたら、殺されるような気さえした。
だから、僕には周りの人間が僕に何を望んでいるのかを敏感に感じ取る必要があった。そして、僕にはそれが出来た。
そうやって周りの人間の期待に応えて生きるのは簡単だった。幸い、それらの期待は僕の能力の範囲内で達成できるものばかりだったのだ。
続きます。
2009/04/20
2009/04/19
期待値
自分に保険をかけるなんて、自分に保険をかけるだけの価値があると思っている人間にしかできない。
少なくとも、私は自分には何の価値も見出せないから、保険なんていくら勧められても承諾できない。
かといって、自分の命と引き替えに守りたい命もない。
私の一番辛い時期は今じゃない。
もっと辛いときはあった。その時よりも辛くなるときが来るかもしれないし、来ないかもしれない。
でも、今のところ一番辛かったのはあの頃。
あの頃、私を生きる世界につなぎ止めていたのは、あの人たち。
いまもあの頃と変わらず、あそこに行けば会えるのだろうか。
どうして、姿を見ることの出来ない形でしか、会えないのだろう。
あの言葉を、私が感じた印象のままの表情で伝えて欲しい。感じ取りたい。
少なくとも、私は自分には何の価値も見出せないから、保険なんていくら勧められても承諾できない。
かといって、自分の命と引き替えに守りたい命もない。
私の一番辛い時期は今じゃない。
もっと辛いときはあった。その時よりも辛くなるときが来るかもしれないし、来ないかもしれない。
でも、今のところ一番辛かったのはあの頃。
あの頃、私を生きる世界につなぎ止めていたのは、あの人たち。
いまもあの頃と変わらず、あそこに行けば会えるのだろうか。
どうして、姿を見ることの出来ない形でしか、会えないのだろう。
あの言葉を、私が感じた印象のままの表情で伝えて欲しい。感じ取りたい。
2009/04/18
もしかしたらこういうことだったのかもしれない
自分が何故か周りとうち解けられないと感じてしまうのは、誰にもいえない秘密があるからかもしれない。
大抵の場合、何か重大な秘密を抱えていると、そわそわしたり落ち着きが無くなったりする。
周りの出来事が自分とは違う世界の出来事のように思ってしまうこともある。
これは、誰にも知られてはいけないような秘密をもったことのある人なら誰でもわかることだろう。
それと同じように、私も重大な秘密を抱えているから、疎外感を感じたり、うまく人と接することが出来なかったり、するのかもしれない。
私の重大な秘密とは、死にたくなることだ。
四六時中死にたいと考えている、ということはない。
しかし、ふとした瞬間、その感情がうごめく。
こういうことは、誰にもいえない、言えないからこそ重大な秘密なのだ。
大抵の場合、何か重大な秘密を抱えていると、そわそわしたり落ち着きが無くなったりする。
周りの出来事が自分とは違う世界の出来事のように思ってしまうこともある。
これは、誰にも知られてはいけないような秘密をもったことのある人なら誰でもわかることだろう。
それと同じように、私も重大な秘密を抱えているから、疎外感を感じたり、うまく人と接することが出来なかったり、するのかもしれない。
私の重大な秘密とは、死にたくなることだ。
四六時中死にたいと考えている、ということはない。
しかし、ふとした瞬間、その感情がうごめく。
こういうことは、誰にもいえない、言えないからこそ重大な秘密なのだ。
ハッピーシフトリターン
週末。
君を待っていたよ。
眠りすぎるのが、つまり寝坊が怖くて夜の薬をハルシオンだけにしていた。
セパゾンも使ってあげよう。
明日は病院。
今回の病院は結構、いい感触なので継続して通院できそうです。
質の良い睡眠がしたい。
寝ても寝ても寝た気がしない。
君を待っていたよ。
眠りすぎるのが、つまり寝坊が怖くて夜の薬をハルシオンだけにしていた。
セパゾンも使ってあげよう。
明日は病院。
今回の病院は結構、いい感触なので継続して通院できそうです。
質の良い睡眠がしたい。
寝ても寝ても寝た気がしない。
2009/04/15
2009/04/13
僕はバイブレイションスーパースター
指先が震えるんです。
薬の副作用なのか、病気の症状なのか。
メイラックスという薬飲んでます。
少し眠気がきます。
たぶん効いてるのかなと思う。
昨日の夜は共同の炊事場でご飯つくって食べたました。
途中で同期の人たちが来て、ワイワイという感じになったのですが、何故か気分が悪くなって、うつむいていました。
良心が痛むというか、そういう場面って、ほんとに困ります。
薬の副作用なのか、病気の症状なのか。
メイラックスという薬飲んでます。
少し眠気がきます。
たぶん効いてるのかなと思う。
昨日の夜は共同の炊事場でご飯つくって食べたました。
途中で同期の人たちが来て、ワイワイという感じになったのですが、何故か気分が悪くなって、うつむいていました。
良心が痛むというか、そういう場面って、ほんとに困ります。
2009/04/12
2009/04/09
2009/04/07
健康診断
今日は健康診断を受けました。
もちろん、血圧は右腕、採血も右腕。
採血はいつも気分が悪くなるので、一人だけ横になった状態でしてもらいました。
採血をしてくれる若い女の方が、ちょっと両腕見せてくださいと言ったので、焦りました。結局、両腕を見せました。
そしたら、その方は、左は痛そうなので止めときましょうと言って右で採血してくれました。
無事に採血は終わったのですが、もちろん、顔面蒼白になってフラフラになりました。
日中に効き目が現れるように、メイラックスという薬を朝に飲んでいるのですが、なんだか少しだけ眠気があるみたいです。
そういえば、エビリファイとかいう薬を、どうも信用ならない医者に処方されてました。忘れてました。
ドーパミンを増やすとかなんとか説明を受けたのですが、一回飲んで気分悪いのでやめました。病院も変わったので、もう過去のことです。
ドーパミンよりも、私の考えではトリプトファンを増やして欲しいのですが。でも、太るかな。
もちろん、血圧は右腕、採血も右腕。
採血はいつも気分が悪くなるので、一人だけ横になった状態でしてもらいました。
採血をしてくれる若い女の方が、ちょっと両腕見せてくださいと言ったので、焦りました。結局、両腕を見せました。
そしたら、その方は、左は痛そうなので止めときましょうと言って右で採血してくれました。
無事に採血は終わったのですが、もちろん、顔面蒼白になってフラフラになりました。
日中に効き目が現れるように、メイラックスという薬を朝に飲んでいるのですが、なんだか少しだけ眠気があるみたいです。
そういえば、エビリファイとかいう薬を、どうも信用ならない医者に処方されてました。忘れてました。
ドーパミンを増やすとかなんとか説明を受けたのですが、一回飲んで気分悪いのでやめました。病院も変わったので、もう過去のことです。
ドーパミンよりも、私の考えではトリプトファンを増やして欲しいのですが。でも、太るかな。
2009/04/05
2009/04/01
低俗な文化
満員電車とか街中とか人の多い場所で身体が接触しても何も言わないのは、とても低俗な文化だと思う。
満員電車に乗る度に考えることがある。
押すなよ。
満員電車だから身体が接触するのは物理的に仕方のないことだ。だから、その点に関しては何も言わないが、押すということはおかしい。
電車なんて何本もあるのだから次のに乗ればいい。
その駅で降りたいのなら、
「すみません、降りるので通してください」
そう言えばいい。
無言で行動する、しかも、身体で押すというのは、高度なコミュニケーション手段である言葉をもつヒトのすることではない。
ヒト以外の動物同然だ。
もし、こういった文化が日本特有のものなら、大恥である。
誰かの著書で紹介されていたことだが、
ある人が、箸を使う習慣を欧米人に文明的でないと言われたという。
しかし、その人はこう切り返す、
「もともと、五本の指で食べていたのが3本になったのがフォークなら、2本の箸はフォークより文明的である」
もともと、行動で意志を表していたのが、言葉で意志を伝えるようになったのだから、言葉を使うことが文明的であるといえる。
満員電車に乗る度に考えることがある。
押すなよ。
満員電車だから身体が接触するのは物理的に仕方のないことだ。だから、その点に関しては何も言わないが、押すということはおかしい。
電車なんて何本もあるのだから次のに乗ればいい。
その駅で降りたいのなら、
「すみません、降りるので通してください」
そう言えばいい。
無言で行動する、しかも、身体で押すというのは、高度なコミュニケーション手段である言葉をもつヒトのすることではない。
ヒト以外の動物同然だ。
もし、こういった文化が日本特有のものなら、大恥である。
誰かの著書で紹介されていたことだが、
ある人が、箸を使う習慣を欧米人に文明的でないと言われたという。
しかし、その人はこう切り返す、
「もともと、五本の指で食べていたのが3本になったのがフォークなら、2本の箸はフォークより文明的である」
もともと、行動で意志を表していたのが、言葉で意志を伝えるようになったのだから、言葉を使うことが文明的であるといえる。
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