サイエンティストが眺めたその池の向こうには、そそり立つコンクリートの壁。
何処までも上に続くその壁は、壁の向こう側よりも壁の上を意識させた。
池は薄く紫に染まって不気味に波打っている。
「これは川かもしれないな」
サイエンティストはぼんやりと足元を見て言った。
川には時々、奇妙な物体が浮かんでいる。
サイエンティストはそれが何なのかに気付いていた。
それがあまりにも自分の体の部分に似ていたからだ。
しかし、サイエンティストは知らなかった。
濃い霧に包まれたこの場所が何なのか。
自分はどこからきたのか。
0 件のコメント:
コメントを投稿